床に坐る文化
 日本の家らしさを代表する和室では、畳の床に直に坐って、食事をしたり、おしゃべりをしたり、勉強や仕事をします。ちょっと疲れたら、そのままごろんと横になることができるのも、和室ならではでしょう。
 また和室は四方に壁があるわけではなく、部屋と部屋、部屋と縁の間を障子やふすまで仕切っています。仕切りを開けておけば、部屋と部屋がかんたんにつながり、ひとつの大きな空間にもなります。そしてちゃぶ台や座卓をおけば食事室、上等な坐布団を出して掛け軸や花を飾れば客室になります。また、布団を敷けば寝室としても使えます。このように和室には決まった使い方はなく、目的に応じて「もの」をしつらえていました。明治期に来日した西洋人は、初めて見るだだっ広い和室にたいへん驚いたといいます。部屋をこんな風に使えるのは、清潔で広々とした床があったからです。そしてそれが、日本的な生活空間やおじぎなどの立ち居振る舞いにつながっていきました。
 こうした文化は、靴を脱ぎ床の上に直に坐って暮らすことで生まれました。

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