お城の中の趣味の空間
 江戸城の中心となる建物は、本丸御殿(ほんまるごてん)といい、その中に「表」や「中奥」、「大奥」がありました。江戸城にはこの本丸御殿の他に、二の丸(にのまる)御殿、三の丸(さんのまる)御殿、西の丸(にしのまる)御殿などもありました。本丸御殿以外は時代によって使い方が多少変わってきますが、西の丸御殿は引退した元将軍が暮らしたり、もしくは将軍の跡継ぎが暮らしていたため、本丸御殿と似たようなつくりになっています。また、本丸御殿の東隣にある二の丸御殿は、3代将軍家光の時代に建てられました。
 この二の丸御殿は、本丸御殿にあるような人と会うための部屋はあまりなく、前回みたように、堀の中に能の舞台をつくったり、池や築山などがある美しい庭に御茶屋(おちゃや)とよぶレストラン兼休息所をつくったりして、将軍の個人的な趣味を楽しむ別荘のような建物でした。将軍の趣味は各人でそれぞれ異なっていて、4代将軍家綱は絵、5代将軍綱吉は能が好きだったことで有名です。また、10代将軍家治は将棋が得意だったそうです。将軍たちは、こうした趣味を二の丸御殿で楽しんでいたのかもしれませんね。

「仕事場所としての「表」」「暮らしの場としての「奥」」「お城の中の趣味の空間」