侵入を防ぐ堀
 お城の周囲に川が流れていれば、敵はそう簡単に城内には入ってこられません。この川を人工的につくったものが堀(ほり)です。水がない場合は空堀(からぼり)と呼びました。
 空堀は、水を引くことが難しい中世の山城に多くつくられました。地形を利用して堀の高低差を大きくしたり、歩きにくいように堀の底を極端に細くして、敵の侵入を防いだのです。さらにお城を守るだけでなく、攻めて来た敵を撃退するため、味方が堀の中に隠れることもありました。
 水のある堀は、近世の平城や平山城で盛んにつくられました。お城の範囲が広くなると、中心的な施設を囲む内堀、城下町の一部まで囲む外堀、その中間地点の中堀、といった具合にいく重にも堀をつくり、敵の侵入を困難にしました。さらに堀の中に菱(ひし)という植物を植えて、泳いで渡ろうとする人にからみつかせたり、水鳥を飼って人の動きに驚いて飛び立つ習性を利用し、夜間の敵の襲来を知らせる警報装置としていました。
 江戸幕府の将軍の住まいである江戸城では、堀の中に舞台をつくり、城内で能や舞などを楽しみました。争いのない平和な時代には、堀はお城を守る役割が少なくなり、文化的なものとして利用されたのです。

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