樹木の上で暮らす
 人が道具やことばを使う以前は、食べ物が得やすく隠れるところがあるジャングルで暮らしていたといわれています。そんな太古の記憶をよび起こすのが、樹上の住まいです。南太平洋の島々や東南アジアなど、たくさんの植物が生い茂る熱帯雨林気候の地域にみることができます。この住まいのもとをたどれば、獲物や敵をみつけるための監視小屋、または猛獣からや敵から身を守るための避難小屋だったようです。
地面から遠く離れた木の上は、豊かな緑に囲まれるため、たいへん涼しいところでした。
 どうして涼しいかというと、植物の葉が太陽の熱や光を受け止め、常に水分を蒸発させているからなのです。この葉の働きによって、周りの熱が奪われます。さらに樹木の足元にある地面からも、水分が蒸発するので周りの温度を下げていきます。その上住まいは数メートルから、高いところでは数十メートルの場所にあり、障害物がないので地面近くより風が強くなり、人の体に感じる温度はずいぶんと低くなります。
 樹の上の住まいは、ふつうの地面に建てた住まいより、出入りが面倒ですが、見晴らしのよさや風通しのよさに魅(み)せられて、欧米や、最近は日本でも、楽しみのために樹の上に小屋をつくる人たちがいるんですよ。

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