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住宅とアスベスト

アスベストと住まい

取材 : 国立保健医療科学院 池田耕一部長

アスベストに起因する病気
アスベスト肺、じん肺、肺がん、中皮腫

高濃度のアスベストを長期間、しかも大量に吸い続けると、アスベスト肺やじん肺、肺ガン、中皮腫になる可能性が高くなることがわかっています。昨年から報道されている悪性胸膜中皮腫の原因は、ほぼ100%アスベストだといわれています。
アスベスト吸引によって病気を引き起こすのは、アスベストの非常に鋭利な先端がDNAを傷つけるからだといわれています。しかし、詳細な原因は実はわかっていません。ただ、アスベストで病気になる原因が化学的なものではなく、物理的な問題であるということははっきりしています。
ホルムアルデヒドなどの化学物質によって起こるシックハウス症候群とアスベストに起因する病気は、全く性質の違うものだということを理解していただきたいと思います。
さらに、かなり「高濃度」なものを「大量」に、しかも「長期間」にわたって吸い続けると、その数十年後に肺がんや中皮腫になる可能性が高くなるわけで、高濃度ではあっても一呼吸二呼吸で病気になるものではありません。
ですから、住宅においてアスベストに曝露され病気になる可能性は非常に低いのです。目の前にアスベストを扱う工場がある住宅に長年住んでいたとか、家族にアスベストを扱う作業員がいて作業着を洗濯していたとか、そういったこと以外ではまず考えられないでしょう。さらに、アスベストが影響するのは呼吸器系においてのみで、消化器系に入ったとしてもほとんど影響がないといわれています。

身近にあるアスベスト建材
さわらなければ危険は少ない

アスベストは非常に優れた性能を持っていますから、断熱や吸音、耐久性を高めるためにアスベスト板やアスベスト管を使用している住宅は、多く存在すると思います。
それらをのこぎりで挽くとか、かんなをかけるとか、サンドペーパーでこするといった、繊維を発塵させるようなことをすれば問題ですが、形状が吹付けでない限り、アスベスト建材があっても心配は無用と考えます。確かに吹付けアスベストははがれ落ちやすいため危険ですが、居住空間で吹付けアスベストがむき出しであることはほとんどありません。
それでも心配するとすれば、日曜大工が好きな人、工務店勤務の人とかでしょうか。その場合は、アスベストを含んでいる材料の加工に気を配り、発塵させないようにすることが大切です。
吹付けアスベストには気を付けたいところですが、居住空間に使われていることはまずありませんから、神経質になることはないと思います。瓦にアスベストが混ぜ込まれている例もありますが、あわてて取り外す必要もないでしょう。逆に専門外の方が作業すると発塵させる可能性が高く、かえってアスベスト濃度を上げてしまうことになりかねませんから、絶対にやめていただきたいと思います。