便利な箱膳
 今ではめったに見られなくなりましたが、各自の食器がしまえる箱膳(はこぜん)というお膳は、大正時代や昭和初期まで、一般的に使われていました。地方やその家の事情によっても異なりますが、各自の箱膳の中にはお茶碗、箸、小皿がしまってあって、専用の棚にまとめて置いてありました。食事時になると、それぞれのお膳を出し、ふたをひっくり返して、食器を並べます。そして、茶碗やお皿にごはんやおかずをよそうのです。手のこんだ箱膳では、引き出しのついたものもあったようです。食事はというと、朝はご飯とおみそ汁と漬物、梅干しくらい、昼は煮物がつき、夜はだいたい朝と同じといったシンプルなものが一般的でした。
 箱膳の中の食器は、毎日の食事のたびに食器を洗うわけではなく、3日に1回、1週間に1回といった間隔で洗っていたようです。ふだんは、ご飯を食べ終わると、お茶を飲みます。それは、口の中をさっぱりとさせるとともに、それぞれの茶碗をきれいにゆすぐことにもなりました。ゆすがれた茶碗は、ふきんでさっとぬぐって箱膳の中にしまい、そのまま棚へ片付けました。

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