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既存不適格建築物を安全に

法改正の概要

既存不適格建築物に関する規制の合理化

  1. 増改築時における建築基準の適用の合理化(部分適用)(法第86条の7第2項及び第3項)
     構造耐力規定又は避難関係規定が適用されない既存不適格建築物であって、これらの規定の適用に関し一の建築物であっても別の建築物とみなすことができる独立部分が二以上あるものについて増築等をする場合においては、当該増築等をする独立部分以外の独立部分に対しては、これらの規定は適用しないものとした(第2項)。また、建築物の部分にかかる規定の一部の適用を受けない既存不適格建築物について増築等をする場合においては、当該増築等をする部分以外の部分に対しては、これらの規定は適用しないものとした(第3項)。
      第2項の独立部分としては、構造規定については相互に応力を伝えないエキスパンションジョイントで構造的に分離されている部分を、避難規定については耐火構造の壁等で避難系統が分離されている部分を政令で位置付けることを予定している。
      第3項の建築物の部分にかかる規定とは、規制対象が「居室」である採光・換気等の規定や、規制対象が「建築設備」である給排水管、昇降機等の規定であり、対象が居室であればその居室を増築等するかどうか、対象が設備であればその設備を改修するかどうかということがメルクマールとなる。


  2. 増改築時における建築基準の適用の合理化(段階改修を可能にする措置)(法第86条の8)
     一の既存不適格建築物について二以上の工事に分けて増築等を含む工事を行う場合において、特定行政庁が当該2以上の工事の全体計画が一定の基準に適合すると認めたときは、最初の工事の着手前に適用しないものとしていた規定について最後の工事の完了時に適合させればよいものとするとともに、当該2以上の工事の間に改正法の規定の施行等があった場合に当該規定を適用しないものとした。
      段階改修を認めるケースとしては、耐震改修と防火・避難関係の改修が必要な大規模なテナントビルにおいて、まず早急に外側から耐震改修を行い、その後テナントの移転が必要な防火・避難関係の改修を行うケースなどが想定される。
      国土交通省としては、本制度の円滑な運用のため、全体計画の認定、建築確認の際の審査方法等に関するガイドラインを、特定行政庁の意見を聞きながら取りまとめ、これを周知することとしている。


  3. 既存木造住宅向けの改修基準の整備(法第86条の7第1項)
     従来、既存不適格建築物を増築等する際に現行基準への適合を求めるのが余りにも酷な規定について、一定の範囲内で増築等する場合には既存不適格のままで扱うこととされている。例えば、法第61条の規定(防火地域)に関する既存不適格建築物をわずかでも増築等すると、3階以上又は延べ面積100m2以上の建築物は耐火建築物に、それ以外のものは準耐火建築物とする必要があり、主要構造部を総入れ替えする大工事が必要となってしまうが、政令で緩和の範囲(増築等する部分が50m2以下で、もとの延べ面積を超えないこと、増築等に係る部分の外壁及び軒裏は防火構造とすること等)を定め、安全性の向上に資する一部改修を可能としている。
      現行の木造住宅の基礎の構造基準については、「一体の鉄筋コンクリート造の基礎」とすることを求めているため、基礎に鉄筋が入っていない古い木造住宅を増築等しようとする場合には、基礎を全面的に造り直さなければならず、結果として改修を断念し、危険な状態のまま放置されるケースが生じている。これに対応するため、今回、既存不適格建築物について一定の範囲内において増築等をする場合には引き続き適用しないものとする規定に、構造耐力規定を追加するものとした。今後、政令等を整備し、既存の基礎の周囲を鉄筋コンクリートで補強するなど、一定の補強を行ったものに限り、小規模な増築等を可能にすることを予定している。