自然条件と住まい
 江戸時代の家相書には、自然の脅威(きょうい)や災害から住む人を守るための注意事項もあります。T字路の突き当たりや袋小路の行き止まりの家はよくないといわれます。道路は風の通り道でもあるので、道沿いにある家より風当たりが強く、火事の時には火の粉が飛んできます。風水では、悪い「気」が直行してくるからということで、このような場所は避けられています。
 「尾先、谷口、宮の前」という昔のことわざがあります。尾先は山の尾根の先の崖下(がけした)、谷口は谷の出口、宮の前は神社やお寺の門前をさし、この3カ所は、人が住むのに適さない場所とされました。尾先や谷口では、大雨や地震などが起きた時に、崖崩れ鉄砲水などの自然災害に遭う心配があるからです。また、神社やお寺の前は、怪しい霊気やいろいろな人が集まってくるので、落ち着いて暮らせないと思われました。でも、現代ならむしろ、ご利益がありそうでありがたいと思う人が多いかもしれません。
 今でも、集中豪雨や台風などで被害を受ける場所の地名には、「滝」や「水」がつく例を見かけます。地名は、場所の特徴や由来を表していることが多いため、地名をかんたんに変えてしまうと、その地域の特徴が分かりにくくなってしまうので、あまり良くないことかも知れません。
 このように、昔からの迷信やことわざをよく調べてみると、意外な真実や昔の人の思いが隠されていることが分かります。家を建てる敷地を選ぶときは、周りの環境にも十分気を配りたいものですね。

「よい敷地 」「庭づくり」「自然条件と住まい 」