緑は人や環境にやさしいものですが、その効果を人に説明するのは、実は大変難しいことです。
緑を見て癒される気持ちや、花を見て感じるよい心持ちを、心理的効果として説明することはできますが、数値化することが難しいのです。低木を複数植えた庭と、大きな木一本の庭は、大きい木一本のほうが日光を遮断する効果が大きいですが、低木の庭も見た目の美しさで人は心理的に癒されます。
そういうことから、環境共生住宅の外部環境の評価は難しく、評価や認定も難しいところだといえます。
また、環境共生住宅は、住宅内の植栽だけでなく、地域の生態環境やまちなみや景観への配慮など、住宅そのものが周辺環境の一部として機能する、非常に公共性の高い空間であるといえます。
また、できあがった緑に対していかに維持管理をしていくかも認定の基準になります。集合住宅の場合は、自治会などの組織が緑の協定を結び、地域の住民と緑化部隊を作って維持管理にあたる場合もあります。
環境共生住宅の植栽は、住まい手(内)に効果があることばかりではなく、周辺(外)への効果も期待できます。例えば花のきれいなもの、香りのいいもの、珍しい品種で生け垣を作れば道行く人の目を楽しませ、地域の環境づくりに貢献できますし、その生垣が連続するとまちなみになり、地域の特長として地域づくりの一環と認識されます。
環境共生住宅の植栽例として、鳥が実をついばみに来る木、バタフライツリーなど蝶が集まる木、昆虫が集まる木などを植栽し、人、木、虫、鳥など生き物同士のハイコンタクトを目指す方法があります。土地のもつ特性を活かし、住まいの内と外を共生させることを目的としています。
個人の住宅では難しい場合もありますが、集合住宅の場合は、設計段階から敷地内に池を作り生き物の生息環境を与えることで、高度なハイコンタクト空間を作り出すことができます。
○ビオトープ 生き物の生息空間をビオトープといいます。水辺ばかりではなく乾燥地、草原など、さまざまな場所がビオトープになります。大田区の下水処理施設では屋上に敷いた砂利の空間がコアジサシの営巣地になりました。
○屋上緑化屋上緑化に適した植物の種類も増えましたし、省管理、低コストなどが実現し、従来よりも取り組みやすくなってきています。屋上の緑地には徹底的に人間が管理して維持してく方法と、人があまりかかわらず放置することで緑の存在を確保する2つの考え方があり、都市再生機構などでは、屋上の緑地の見え方を3つの区分に分け、その目的に応じた管理から全体的に省管理の方向に進んでいます。
まず個々の住宅や小さな空地の緑化から進めなければ大きな効果は得られません。一軒に一本の緑陰樹があれば直射日光を遮り、それが連続的になって線、さらに面となれば、地域の気温が下がることが期待できます。
都心部の道路の焼けこみ防止用街路樹は、道路を覆い輻射熱を防ぐことが目的ですが、そうなると近隣住民の家も日陰になるため、抵抗感を持たれる場合が多くあり、効果的な植栽を実施するのが難しいのも事実です。
一般に良いと思われている街路樹でも、種類によってはヒートアイランド対策には効果が得にくいものもあります。管理のしやすさや、姿の美しさだけで選ぶと、街路の輻射熱が抑えられない場合があるのです。直射日光を遮るには、大きな緑陰が必要で、大きな樹冠を持つ木を選ぶことが大切です。
現在、都心から大きい木が減少しつつあります。背の高い木はさまざまな環境緩和に貢献しているのですが、かつて街路樹や個人の住宅にある大きな木が緑陰をつくっていた住宅街では、住民が入れ替わり高い木が排除され、あるいは宅地の小区画化により明るい空間へと様変わりしてしまっています。
日本の住宅と庭の関係は、風土や文化を凝縮し、自然の節理を取り入れ、庭が環境共生そのものといえましたし、かつて住宅の傍らに多くあった雑木林も環境共生の本質を示していました。庭は、住まい手が周辺の環境を熟知し気候風土を反映させることで、住宅の内と外をつなぐための機能を受け持ってきたのです。日本人が自然と共生してきた証です。
環境共生の植栽計画は、周辺環境を読み、環境と共生する空間をつくることが目的なので、植物の生理、生態を熟知し、地形や地質、本来の目的と植物の相性を間違えないよう、一歩踏み込んだ深い知識と理解が必要です。
植栽材料は郷土種であることはもちろん、空間に適した形態であること、成長量を持っていること、環境に対応できること、そして植栽効果がおおいに発揮される配植でなければなりません。一木一草から植物そのものを認識し、土地そのものへの理解が深まらなければ、環境共生の目的は達成できないのです。