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住生活基本法

変化する住宅生産者の意識

住宅事業者にとっての基本法

関係者それぞれの責務が明記されている中で、私たち住宅事業者が一番努力しなければいけないことは、国や地方公共団体と協力して、地域ごとの指標を実現するために努力することです。
具体的には、既存住宅が充分評価され流通する市場を作っていくことです。

諸外国では「住み替え」という概念は、法律で仕組みを作らなくても、生活に組み込まれているようです。所得水準に合わせて住み替える、生活スタイルが変わったら住み替える・・・生活に根づいた仕組みです。
しかし、日本にはそういった習慣が根づいていません。作ったら壊す、そして新しいものを建てる。これが従来の日本のやり方でした。しかし、量から質へ、ストック重視の市場では、住宅・住環境を社会的資産として維持し、使いまわしていくことが求められています。
日本の住宅は、世界的にも素晴らしい性能を持っています。しかし、既存住宅の評価や流通性は相当遅れているのが現状です。定期的に手入れされている住宅は、20年経ったとしても、欧米では少なくとも横ばい、下がるにしてもゼロになることはありませんが、日本では多くの場合ゼロになってしまいます。
良質な住宅ストックが市場に充分流通し、国民それぞれの価値観にあった住宅を選ぶことができるような環境作りを進めていくことが重要です。事業者自らが良い住宅を作り、まちなみを整備することで、そこにある住宅が高い評価を受けて流通していく市場を目指しています。
年数が経てば経つほど、家も含めたまち全体の資産価値が上がっていくのが、理想的なまちづくりなのではないでしょうか。住宅そのものをもっと長期的な視点で考えること、これが鍵となっているのかもしれません。これからは高齢化・少子化が進み、環境への配慮がますます重要になっていきます。だからこそ、いいものを建てて長く使っていくことが重要です。

既存住宅の市場が活発になっていくと、住み替えや買い替えがスムーズになるだけではありません。例えば、適切な維持管理がなされた既存住宅が市場で高い評価を受けるようになれば、リバースモゲージという概念も定着してきます。年金の問題などがあり老後が心配な日本では、評価の高い住宅を持っていることで不安が少なくなります。老後の不安のためにお金を貯めこむ必要はなくなり、現金は消費に回す余裕ができます。一つの例ですが、このような循環になっていくのが一番理想ではないでしょうか。
また、例えばまちなみを美しくする電線地中化も、実は美観だけの問題ではなく、災害時への有効な備えになります。電線類が地下に埋設されていれば、万が一災害で分断されても、地上に比べて早い復旧が見込めるからです。単なる景観としてだけではなく、安心・安全という意味合いから、電線の地中化は大変有効なのです。
この2つの例のように、住生活基本法では、住宅・住環境を多面的にとらえ、住みよい国づくりを目指しています。「豊かさが実感できる社会」とは、具体的には「資産性が損なわれない住宅・住環境づくり」のことであり、資産を残せる社会は健全な社会だともいえるのではないでしょうか。

しかし、国民の意識をすぐに変えるのは難しいのかもしれません。
産業廃棄物の量が減少したり、まちがきれいになったり、地震にそなえた設備が増えたり、住宅の寿命が長くなったり、一見バラバラなことの積み重ねが、美しく住みよい国の素になるのではないでしょうか。今すぐには変われないかもしれないけれど、5年後、10年後のそれを目指していくことから始めることが大事だと思うのです。

住生活基本法では、都道府県ごとに都道府県計画を策定することを定めています。
都道府県や地域によって、適した住宅政策は違ってきます。それぞれの地域で、豊かな生活を送れるということを、地方自治体が考えていかなければならない仕組みになっています。
そうすると、事業者と地方公共団体という関わりが、これまで以上に重要になってきます。お互いに意見を言ったり、要望するなど、助け合っていかなければなりません。


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